お客様とお会いして、改めて思うこと ⑤
~実際に見ていただくと伝わる、素材や手仕事の細やかさ~
店頭で制作実演をしていると、実際に作品をご覧になったお客様から、「写真で見るのと印象が違いますね」とお声をいただくことがあります。
そのたびに、節句飾りの魅力は、やはり実際に見ていただくことでより深く伝わるものなのだと感じます。
鎧兜は、形の美しさはもちろんのこと、素材の表情や細やかな手仕事の積み重ねによって、その印象が大きく変わります。
金具の繊細な細工、糸の色合い、小札の重なり、革や裂地の風合い。
一つひとつは小さな要素であっても、それらが丁寧に重ねられることで、全体としての品格や雰囲気が生まれていきます。
けれども、そうした細部のよさは、写真だけではなかなか伝わりきらないことがあります。
もちろん、今は写真でも美しくご覧いただける時代ですが、それでも実物を前にしたときの空気感や、素材の持つ深み、手仕事ならではのやわらかな表情までは、どうしても伝えきれない部分があります。
実際にご覧いただくと、「小さいのにしっかりしていますね」「細かいところまで丁寧ですね」といったお言葉をいただくことがあります。
それは、単に飾りとして整っているということだけではなく、細部にまで気を配って仕立てられていることが、自然と伝わっているからではないかと思います。
作り手としても、そのようなお声をいただくたび、見えにくいところにこそ大切なものがあるのだと、あらためて感じます。
特に鎧兜のようなお飾りは、遠くから見たときの華やかさだけでなく、近くで見たときに感じられる緊張感や端正さが、とても大切なのだと思います。
細かな部分がきちんとしているからこそ、全体を見たときにも品よく感じられる。
その積み重ねが、「本物らしさ」につながっていくのではないでしょうか。

店頭では、最初は全体の雰囲気に惹かれて足を止められたお客様が、近づいてじっくりとご覧になるうちに、素材や細工の細やかさに気づいてくださる場面があります。
そして、そうした細部に目を留めていただけることを、私たちはとてもうれしく思っています。
見た目の華やかさの奥にあるものまで感じ取っていただけたとき、作り手の思いも少し伝わったような気がするからです。
私たちは日々、よりよいものをつくりたいという思いで制作に向き合っています。
その中で大切にしているのは、ぱっと見た印象だけではなく、近くで見ても、時間をかけて見ても、きちんとよさが感じられることです。
毎年飾るたびに新たな発見があり、見るほどに味わいが増していく。
そのような節句飾りでありたいと思いながら、一つひとつ手を重ねています。
本来であれば、実際に店頭や工房でご覧いただき、素材の風合いや手仕事の細やかさを感じていただけるのが何よりです。
けれども、実演の場にお越しいただくことが難しい方もいらっしゃるかと思います。
そのような方にも、ものづくりの一端を少しでも身近に感じていただけるよう、当工房のWebページでは制作工程の動画(別ウィンドウでyoutubeに遷移します)もご覧いただけるようにしております。
実際の制作の様子をご覧いただくことで、完成したお飾りの背景に、どのような手仕事があるのかを感じていただけるのではないかと思います。
作品そのものとあわせて、そうした工程にも目を向けていただくことで、節句飾りの見え方もまた少し違ってくるかもしれません。
これからも、素材のよさと手仕事の積み重ねが自然に伝わるようなものづくりを大切にしながら、一つひとつ丁寧に制作を続けてまいりたいと思います。
そして、実際にご覧いただける機会はもちろん、Webを通してでも、当工房のものづくりの思いや細やかさに触れていただければありがたく思います。
第四代 平安住一水
