式正の鎧(しきしょうのよろい)

正式の鎧の意味で、大鎧を他の胴丸、腰巻、腹当、当世具足などと区別していうときの言葉。
「きせなが」ともいう。

弦走皮(つるばしりがわ)

大鎧の前方から左前方にかけて画革を貼るのは、弓を引いたときに弦が引っかかるのを防ぐ意味からで、その皮のことをいう。

大鎧(おおよろい)

形式はほとんど一定で、前立挙二段、後立挙は逆板を含めて三段、衝胴四段。なお草摺は脇楯を含めて四間五段下がり。
胸に弦走皮を貼り、栴檀板、鳩尾板を結び、後ろは押付と肩上を続けて、肩上には障子板を立てる。
さらに逆板には総角付けの鐶を打ち、総角を結んで大袖の緒と繋いで袖の調節をはかる。
左右脇の草摺りは蝙蝠付けという画革で繋ぐ。

栴檀板(せんだんいた), 鳩尾板(きゅうびのいた)

大鎧の付属品で、両方で一対をなす。栴檀板は、右胸上部の隙間を守るため、鳩尾板は、左脇前が空くのを防ぐために付けられたもの。
形が違うのは、この用途の違いからきている。栴檀板は、弓の弦の引っかかるのをはずし易くするため。
鳩尾板は、弓を引くとき左手が前へ出るが、その際、左胸脇はまったく無防備となるので、小さな楯のような働きをする。

立挙(たてあげ)

鎧の胴で、胸板、押付板より下、衝胴より上の部分のこと。
大鎧の場合、前が二段、後ろが三段である。

押付(おっつけ)

胴鎧の背に当たる金具まわりの部分。後立挙の上部のとりつける。
大鎧は、押付と肩上が一体となっている。

逆板(さかいた)

大鎧のみ付けられている小札板で、押付から二段目の板をいう。
胴とは遊離して動けるように裏にも縅がある。鎧の屈伸の便のために設けられたものだが、中央に総角付の鐶が打たれ、袖の懸緒と水呑緒がこれに結んだ総角と連結され、袖の位置の調節を行っている。

肩上(わだかみ)

肩の上に当たる部分で、頸寄りに櫛型の障子板がたてられ、肩上先は胸板に結びつける。

衝胴(かぶきどう)

“かぶく”とは、ひとつなぎに長く一環していることを意味し、鎧の胴の、ひとまわりした札板の部分をいう。長側(なががわ)ともいう。

総角(あげまき)

とんぼ十字に結んだ紐をいう。通常、先端は房で、ほとんど装飾的意味にもちいられている。
しかし、背の総角の本来の効用は装飾ではなく、袖の緒に連結させて、腕の動きをスムーズにするためのものである。
そして、一般に総角といった場合には、胴の背のそれをさしている。

草摺り(くさずり)

鎧の胴に付属し、腰から上膝部を守る部分をいう。大鎧は四間に分かれる。

壺板(つぼいた)

大鎧に付属する脇楯の上部の鉄板をいう。壺の形に似ているところから名付けられた。

脇楯(わいだて)

大鎧の右の引合せの空間をふさぐ部分。
壺板の下方を画革で蝙蝠付けして、その下に草摺りを綴じつける。

白檀塗(びゃくだんぬり)

素材に下地をし、磨きをかけたうえに漆を塗り、その上に金箔を押す。
さらにその上から透き漆をかける。透き漆は、栗色の濃いものと飴色のものとがある。