~お飾りを選ぶとき、お客様が本当に大切にされていること~

これまで店頭での出会いや、お客様とのやりとりの中で感じたことを、この連載で少しずつ書いてまいりました。
直接お会いできることのありがたさ、豪華さだけではない美しさ、節句飾りを選ぶ時間そのもののあたたかさ、今の暮らしに寄り添いながらも本物らしさを求めておられるお気持ち、そして実際に見ていただくことで伝わる素材や手仕事の細やかさ。
そうしたことを振り返る中で、あらためて感じることがあります。

それは、お客様が節句飾りを選ばれるとき、本当に大切にしておられるのは、見た目の華やかさや大きさだけではないということです。

もちろん、節句飾りはお祝いのお品ですから、第一印象の美しさや晴れやかさはとても大切です。
目にしたときに心が動くこと、節目にふさわしい華やぎが感じられることは、やはり大きな魅力です。
けれども実際にお話をうかがっていると、その先にあるもっと深いところを、お客様は大切にしておられるように思います。

たとえば、それがお子様のために本当にふさわしいものであるかどうか。
ご家族の思いにきちんと寄り添うものであるかどうか。
毎年飾るたびに、うれしい気持ちで向き合えるものであるかどうか。
そうしたことを、お客様は丁寧に考えておられます。

若いご夫婦とお話ししていると、今の暮らしの中に無理なくなじむこと、長く大切にできることをとても重視しておられると感じます。
一方で、祖父母世代の方々は、お孫様のためにできるだけよいものを贈りたいという深い愛情をもっておられます。
その視点は少し異なるようでいて、根本にあるものは同じなのだと思います。
それは、「大切な子のために、心から納得できるものを選びたい」というお気持ちです。

店頭でお客様がじっくりと見比べられたり、ご家族で相談されたり、ときには迷われたりするご様子を拝見していると、その時間の中には、単なる品選びを超えた思いが流れているように感じます。
どれが立派か、どれが豪華か、ということだけではなく、この子にどのような願いを託したいか、この先どのように寄り添っていくお飾りであってほしいか。
そうしたことを、皆さまそれぞれのお立場で思っておられるのではないでしょうか。

だからこそ、お客様が最後に選ばれるものには、そのご家族らしさが表れているように思います。
華やかなものに心を惹かれる方もおられますし、落ち着いた品のよさを大切にされる方もおられます。
コンパクトで飾りやすいことを重んじる方もおられれば、素材や細工の確かさに心を寄せられる方もおられます。
けれども、どの場合であっても、その奥には「この子のために」というまっすぐな思いがあります。
私たちは、そのお気持ちこそが、何より大切なものなのだと感じています。

作り手としては、つい技術や意匠、素材のことを深く考えます。
それはもちろん大切なことです。
けれども、お客様との出会いを重ねる中で、私たちが本当に向き合うべきものは、その先にあるご家族の願いなのだと、あらためて教えられます。
節句飾りは、ただ美しいだけのものでも、ただ立派なだけのものでもなく、願いを託し、成長を見守り、ご家族の思い出とともに重なっていく存在なのだと思います。

だからこそ私たちも、見た目の華やかさだけではなく、長く大切にしていただけること、毎年飾るたびに心が通うこと、そしてご家族の思いを静かに受け止められることを大切にしながら、ものづくりを続けていきたいと考えています。

この連載を通して、お客様とお会いする中で教えていただいた多くのことを、あらためて振り返ることができました。
店頭でのお声、ご家族で選ばれるご様子、作品を前に足を止めてくださる瞬間、そのどれもが、私たちのものづくりにとって大切な学びであり、励みとなっています。

節句飾りは、お祝いの日に飾って終わるものではなく、その後も毎年ご家族の時間の中にあり続けるものです。
飾るたびに、その年のことを思い出し、お子様の成長を重ね、ご家族の歩みとともに意味を深めていく。
そのように長く寄り添っていくお飾りだからこそ、お選びになるときに大切にされる思いも、自然と深いものになるのだろうと思います。

もし節句飾りをお選びになる中で、迷われることや気になることがございましたら、どうぞお気軽にご相談いただければと思います。
大きさのこと、雰囲気のこと、飾る空間との相性、込めたい願いにふさわしい一品について。
それぞれのご家族のお気持ちに寄り添いながら、ご一緒に考えさせていただければ幸いです。

お客様とお会いして、改めて思うこと。
その一つひとつは、私たちにとって、ものづくりの原点を見つめ直す機会でもありました。
これからも、ご家族の大切な願いにふさわしい節句飾りを、真摯に、丁寧につくり続けてまいりたいと思います。

 

第四代 平安住一水

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2026年 5月05日