~小さく飾れることと、本物らしさを求めるお気持ちの両立について~

店頭でお客様のお話をうかがっていると、近年あらためて強く感じることがあります。
それは、「できるだけ小さく飾りたい」というお気持ちと、「それでも本物らしいものを選びたい」という思いが、どちらも大切にされているということです。

現代の住まいでは、以前に比べて節句飾りを置く場所が限られることも少なくありません。
床の間のあるお住まいばかりではなく、リビングや棚の上、限られたスペースの中で、無理なく飾れることを大切にされるご家庭が増えているように感じます。
そのため、大きすぎず、日々の暮らしの中に自然におさまることは、節句飾りを選ぶうえでとても大切な条件になっています。

実際に店頭でも、「あまり大きすぎないものを探しています」「飾る場所に合うサイズ感で選びたい」といったお声をいただくことがよくあります。
それは決して、節句飾りに対する思いが軽くなったということではなく、今の暮らしの中で無理なく、そして心地よく迎えたいという、たいへん自然なお考えなのだと思います。

けれどもその一方で、サイズが小さければそれでよい、というわけではないことも、同じように強く感じます。
お客様が本当に求めておられるのは、ただコンパクトなお飾りではなく、小さくても品があり、しっかりとしたつくりで、節句のお祝いにふさわしい存在感を持つものです。
つまり、「小さく飾れること」と「本物らしさ」は、どちらか一方ではなく、両方が求められているのだと思います。

この「本物らしさ」というのは、単に豪華であるということだけではないように感じます。
つくりに無理がないこと。
細部まで丁寧に仕立てられていること。
小さくなっても、鎧兜としての美しさや品格がきちんと感じられること。
そうしたものを、お客様はよくご覧になっているのだと思います。

特に若いご夫婦のお話をうかがっていると、暮らしに合う大きさを大切にしながらも、やはり「せっかく迎えるなら、きちんとしたものを選びたい」というお気持ちを強く感じます。
インテリアになじむこと、飾りやすいこと、しまいやすいことはもちろん大切です。
けれども、それだけではなく、毎年飾るたびにうれしく思えること、見れば見るほどよさが感じられること、そしてお子様のために選んだものとして誇りを持てること。
そのような思いが込められているように思います。

また、祖父母世代の方々も、お孫様のために「小ぶりでも、よいものを」と願っておられることが多いように感じます。
以前のように大きな飾りを置く場所がなくても、だからこそなお、質のよいものを選びたい。
数や大きさではなく、本当に大切なものをきちんと贈りたい。
そのお気持ちには、お孫様への深い愛情と、節句という節目を大切に思う心が感じられます。

私たち作り手としても、小さいから簡略化されていてよいとは考えておりません。
むしろ、限られた大きさの中にどれだけ本質を込められるか、どこまで品格や美しさを保てるかが大切なのだと思います。
小さくても、そこに鎧兜らしい緊張感や端正さがあり、節句飾りとしての意味がしっかりと感じられること。
そのようなものづくりを大切にしたいと考えています。

今の時代には、今の時代の暮らしがあります。
その中で、無理なく飾ることができることは、とても大切です。
けれども同時に、節句飾りが本来持っている祈りや品格まで小さくしてしまってはならないのだとも思います。
暮らしに寄り添いながらも、変えてはならない本質を守ること。
そこに、これからの節句飾りのあり方のひとつがあるのかもしれません。

店頭でお客様とお話をしていると、小さく飾れることと本物らしさ、その両方を大切にしたいというお気持ちを、たびたび教えていただきます。
そしてそのことは、私たちのものづくりの方向をあらためて見つめ直す機会にもなっています。

これからも、今の暮らしに自然となじみながら、節句飾りとしての品格と本質をきちんと感じていただけるようなものづくりを、丁寧に続けていきたいと思います。

 

第四代 平安住一水

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2026年 5月03日