~節句飾りを選ぶ時間そのものが、ご家族の思い出になっていること~

店頭でお客様とお話をしていると、節句飾りを選ぶ時間そのものが、ご家族にとって大切な思い出になっているのだと感じることがあります。

節句飾りは、お子様の健やかな成長を願って迎えていただく特別なお品です。
ですから、どのようなお飾りを選ばれるかはもちろん大切なのですが、それと同じくらい、そのお飾りを選ぶ時間にも大きな意味があるように思います。

店頭では、ご夫婦でじっくりとご相談されながらご覧になるご様子や、おじい様おばあ様もご一緒に、皆さまで和やかにお話しされている場面をよく目にします。
「こちらの色合いが好きですね」
「お部屋にはこのくらいの大きさがちょうどよさそうですね」
「この雰囲気はあの子に合いそうですね」
そんなやりとりを重ねながら、少しずつひとつのお飾りに気持ちが定まっていくご様子を拝見していると、それは単に品物を選ぶ時間ではなく、ご家族でお子様のことを思い合う、かけがえのない時間なのだと感じます。

ときには、どれもそれぞれに魅力があり、すぐには決められないこともあります。
けれども、その迷う時間もまた大切なものなのだと思います。
お子様のことを思い浮かべながら、どのようなお祝いにしたいか、ご家庭にどのような願いを込めたいかを自然と話し合うことになるからです。
そうした時間の積み重ねそのものが、すでに節句の大切な思い出の一部になっているのではないでしょうか。

特に若いご夫婦のお話をうかがっていると、節句飾りを選ぶことを、単なる行事の準備としてではなく、家族にとってのひとつの節目として大切に考えておられることが伝わってきます。
お子様が生まれて初めて迎える節句。
その特別な年に、どのようなお飾りを迎えるかを考える時間は、ご家族にとって新しい歩みのひとつでもあるのだと思います。

また、祖父母世代の方々がご一緒の場面では、その時間がさらにあたたかなものになることがあります。
お孫様への愛情を込めて「よいものを贈りたい」と願われるお気持ちと、親御様が日々の暮らしの中で大切に飾っていきたいという思いが、自然に重なり合っていく。
そのご様子を拝見していると、節句飾りはひとつのお祝いのお品であると同時に、ご家族の思いをつなぐ存在でもあるのだと、あらためて感じます。

実際にお選びいただいたあと、「みんなで悩みながら選んだことも、きっとよい思い出になりますね」と感じる場面も少なくありません。
大きくなったお子様に、「この兜は、みんなで相談して選んだのですよ」と話して聞かせる日もあるかもしれません。
そう考えると、節句飾りには、飾るその日だけでなく、選ぶ時間からすでに思い出が宿り始めているように思えます。

私たち作り手は、ついお飾りそのものをよりよくすることに心を尽くします。
もちろんそれは何より大切なことです。
けれども店頭に立ち、お客様のご様子を拝見していると、私たちが手がけているのは品物だけではなく、ご家族が思いを重ねる時間にも関わる仕事なのだと、気づかされます。

だからこそ、見た目の美しさやつくりの良さだけでなく、ご家族で囲んだときに自然と会話が生まれること、毎年飾るたびにその時の思い出がよみがえること、そうした時間の積み重ねにもふさわしいものでありたいと思います。

節句飾りを選ぶ時間は、あとから振り返れば、ご家族にとってひとつの大切な記憶になっているのかもしれません。
そのようなかけがえのない時間に、少しでも寄り添えることをありがたく思いながら、これからもものづくりに励んでまいりたいと思います。

 

第四代 平安住一水

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2026年 5月02日