~直接お会いできることのありがたさ~

今年のお節句売り場では、制作実演が再開されました。
本年の端午の節句に向けて、お祝いのお飾りをお求めになるお客様に、ものづくりの実際を少しでも身近に感じていただければとの思いから、私も店頭での制作実演に立たせていただきました。

コロナ禍をきっかけに中断していた実演でしたが、このたびようやく一部店舗にて再開される運びとなりました。
今回は、その場に立つ中で改めて感じたことを書いてみたいと思います。

久しぶりの実演ということもあり、今シーズンは少し緊張しながらのスタートとなりました。
けれども、各店のスタッフの皆さまが以前と変わらぬ温かさで迎えてくださり、まずそのことを大変うれしく、ありがたく思いました。
久しぶりに再会する方、新たにご縁をいただく方、さまざまな出会いの中で言葉を交わしながら、自然と売り場の空気にもなじむことができ、おかげさまで終日にわたり落ち着いて制作に向き合うことができました。

若い頃に販売の仕事に携わっていたこともあり、私はもともとお客様と直接お話しすることが好きです。
そのため、制作実演に伺う機会は格別の楽しみのひとつでもあります。
かわいらしい赤ちゃんと出会えたり、ご家族と一緒に写真を撮らせていただいたりすることもあり、そうしたひとときは私にとって大きな喜びです。
また、制作実演は、手仕事の様子をご覧いただくだけでなく、当工房のものづくりや、その背景にある思いを知っていただく大切な機会でもあると感じています。

そして今回、久しぶりにその場に立たせていただいたことで、改めて強く感じたことがありました。

私たちは、少しでもよい工芸品をお届けしたいという思いで、日々ものづくりに励んでおります。
けれども店頭では、贈られる方、飾られる方、それぞれの思いに直接触れることができます。
親御様の深い愛情、おじい様おばあ様のあたたかな願い、そしてお子様の健やかな成長と幸せな未来を願う、まっすぐなお気持ち。
そうした思いに触れるたび、工房にいるだけではなかなか気づききれない大切なことを、改めて教えていただいているように感じます。

とりわけ感じたのは、鎧兜には「作り手」と「受け手」の双方がいて、はじめてその価値が結ばれるのだということです。
作り手が心を尽くして仕立てること。
受け手が、そこに願いや祈りを託してくださること。
その両方の思いがひとつになってこそ、お飾りは単なる品物ではなく、ご家族にとって意味のある存在になっていくのだと、改めて深く感じました。

また、よりよい作品づくりを目指すためには、私たち作り手が、お飾りくださる方々の思いに常に触れていることが大切なのだとも感じました。
「わが子の幸せを願う」という根本の思いは、今も昔も変わりません。
一方で、その願いの表し方や、お飾りに寄せられる関心、美意識は、時代とともに少しずつ変化していきます。
そうした細やかな変化にも心を配りながら、変わらぬ本質を見失わずにものづくりを続けていくことの大切さを、今回の実演を通して改めて教えていただきました。

毎年生まれる新たな出会いに感謝しながら、これからも節句飾りに込められた願いに真摯に向き合い、よりよいものづくりに励んでまいりたいと思います。
その思いを新たにした、今年の制作実演でした。

 

第四代 平安住一水

 

2026年 4月18日