「平安住一水」と「平安一水」はちがうもの?
まず、「○○住(〜じゅう)」という銘についてご説明いたします。
これは、甲冑や日本刀などにおいて、製作者が作品に刻む作者名や制作地(居住地・工房所在地)を示す表記です。
たとえば刀剣の世界では、「銘(めい)」とは刀工が自らの名や制作に関わる情報を刻んだものであり、作者を特定し、その作風や系譜、制作背景を読み解くための重要な手がかりとなります。銘の中に「住」という字が含まれる場合、多くは刀工がどこに住んでいたか、あるいは鍛刀場を構えていた地域を示しています。
一方、甲冑の場合は刀剣とは事情が異なります。甲冑制作は分業制であることが多く、金工、錺師、威師、甲冑師など、複数の職人が関わるため、銘にもそれぞれの職種の名が混在して見られるのが特徴です。
そのなかでも、比較的確認例が多いものとして挙げられるのが
**「南都住(なんとじゅう)○○」**という銘です。
南都、すなわち奈良には、春日大社・東大寺・興福寺といった大寺社があり、これらに関わる御用甲冑師や金工が数多く活動していました。そのため、「南都住○○」とは、奈良に住み、あるいは工房を構えていた○○という作者による甲冑であることを示す表現と考えられます。
私の銘である
**「平安住一水(へいあんじゅう・いっすい)」**は、次のような構造になっています。
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平安 → 地域名(京都)
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住 → その地に住し、工房を構えること
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一水 → 飾り甲冑師名(作者名)
したがって、「平安住一水」が私の正式な銘となります。

もっとも、長年にわたる制作活動の中で、「平安一水」あるいは単に「一水」とお呼びいただくことも多くなりました。これらはいずれも通称として、同一の作者を指すものです。ただし、当工房で制作した鎧兜本体に記す銘は、すべて正式表記である「平安住一水」に統一しております。


私は現在、「一水」の四代目として制作活動を続けております。
また、2025年は、当工房が飾り甲冑づくりを始めてちょうど100年の節目の年にあたります。
この長きにわたる歩みは、ひとえに多くの皆様のお力添えによって支えられてきたものです。ここに、代々の一水に代わりまして、心より深く御礼を申し上げます。
今後も初心を忘れることなく精進を重ね、より良い甲冑をお届けできるよう、誠心誠意努めてまいります。
第四代
平安住一水
