鎧兜の修繕・修復・洗い 02
お子様が立派にご成長されたときには他所にはない唯一無二の錺(かざり)甲冑として・・・
丁寧に手作りされた鎧兜は年月が経つごとにその風合いを増し優れた工芸品となっていることでしょう。
長年お子様のご成長とともにあった鎧兜を末永くご鑑賞いただくために一水工房では期限を設けず作品のお手入れをいたしております。
ご成長とともに醸される独特の風合いはそのままにお手入れいたしますので、大切な想い出はそのままにお持ちいただくことができます。
今回はお客様よりお預かりした兜の修繕の様子をご紹介いたします。
大変古い作品で当工房のものと特定することはできませんでしたが、京製品に特長的な工法で作られたものであり、とても大切にされている品だと思いましたのでうちでお役にたてるのならば、とお引き受けいたしました。
兜の裏側の白檀塗の部分が傷んで一部が剥離してしまっています。
今回はこの部分の修復のご依頼です。
このような場合は縅糸(おどしいと)を切断しバラバラに分解してから塗面の再構築をしていくという手法になります。
しかしそれでは、縅糸や飾り金具など様々な部分を新調しなければならないため、全体の雰囲気が大きく変わってしまうことになります。
経年変化によるせっかくの風合いを損なうことなく修復するためには、格段に難易度は上がりますが、白檀塗りの部分修復で対応することが最善と考えました。
修復箇所を特定し慎重に塗面を剥離していきます。下地の構造についての理解が求められる部分です。
作業をすすめるうちに気付いたのですが、この塗面はどうやら以前に修復されたもののようです...複数の素材が混在することになるためまた一段と難易度が上がりました...
マスキングをして修復作業をすすめていきます。
白檀塗とは銀箔や粉、あるいは金銀の塗料の上から塗り重ねることにより独特の飴色を表現する手法です。
まずは下地の上に箔下塗を行い金箔を押していきます。
続いて透き色で上塗りをかけていきます。元の色と同じになるように数回に分けて塗り上げます。
上部2段はうすく透き色を塗っています。一番下の段は金箔のままです。
色合わせをしながら作業を進めます。
元の色と同じになるまで塗りすすめてから接合部のぼかし処理などを行い白檀塗を仕上げます。
修復作業はやり直しがきかないことが多く、集中力のいる難しい仕事だと思います。今回も着手する前に作品の年代や技法などを細かく観察して修復方法を慎重に検討しています。
しかし作業を進めるうちに様々な問題点に突き当たることもよくあることです。
そんなときも慌てず粘り強く取り組みを続けることが大事だと考えて作業をしています。
↑before ↓after
今回もまずまずの仕上がりになったと思っていますがいかがでしょうか。
ご相談事などがございましたらお気軽にお問合せフォームからご連絡くださいませ。
京都甲冑株式会社 一水工房